設立趣旨


 日本では毎年30万人以上ががんで亡くなられており、がんは一般市民の健康に対する最大の脅威です。がんで苦しむ人を減らすには、新しい予防法や治療法の開発が必要です。

がんに対する治療には、抗がん剤、手術、放射線治療、およびそれらを組み合わせる集学的治療があり、これら治療の開発には、動物実験だけでなく、患者さんを対象とした臨床研究が必須です。製薬企業は抗がん剤の製造販売承認のための臨床研究を行いますが、その他多くの治療は研究者である医師が中心となって開発しなければなりません。そのための研究を研究者主導臨床研究といいます。

しかし、わが国の研究者主導臨床研究の実施体制は、がん研究の先進国である米国と比べ30年以上遅れているといわれています。診療現場の医師や看護師などの医療技術が遅れているのではなく、医師以外の臨床研究の担い手である統計家やデータマネージャー、臨床試験コーディネーターなどによる支援体制の整備が遅れているのです。このことは、わが国のがん患者さんが、海外で標準となっている医療を受けられていないことの一因になっているといえます。このような状況を打破し、わが国のがん患者さんが常に最新かつ最善の治療を受けられるようにするためには、研究者主導臨床研究の実施体制の整備が必要です。

私たちはこれまで厚生労働省の研究班が集まって日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group: JCOG)を組織し、任意団体として研究者主導臨床研究を行ってきました。しかし、任意団体のままで活動を行うには限界があり、これまでの活動を継続し、更に発展させるためには研究者主導臨床研究を実施する組織の法人化が必要と考え、特定非営利活動法人を立ち上げることを決意しました。

私たちは主として、次の活動を通して、がん患者さんや一般市民の皆様に最新かつ最善の治療(診断方法や予防方法、患者サポートなどすべての医療を含みます)を提供し、一般市民の健康と福祉の増進に寄与します。

私たちは、当団体を「特定非営利活動法人がん臨床研究機構」と呼称し、当団体が種々の契約に支障をきたさないために、また、当団体の運営が継続し発展するために法人化することを検討し、特定非営利活動法人を申請することにしました。

 平成18年5月18日  設立発起人代表者   
福田 治彦